ドラマのような展開



 以前にテレビで、タイトロープという題名の映画がありました。

週に1度放映され、確か、主人公が誰かに追われていて危険な目に遭い、
切羽詰まったギリギリのところで危機を回避するというような内容の
ドラマだったと記憶しております。

題名の如く、細いロープのような道筋を行く一人の男の物語でした。

(別のドラマの逃亡者とは少し内容が違っていた?)







話は変わりますが、家を新築して約16年になります。

計画から完成まで約3年もかかりました。順調に進行して完成するであろう
新居を思い描いていたのですが、果してどうなるのかというような成り行き
だったのです。


ドラマのような危機感はありませんでしたが、家づくりは予想外の
展開になってしまいました。

少し大袈裟に言うと丁度ドラマのタイトロープと同じような先の読
めない綱渡りのようなものだったのです。



これが事の始まり


住んでいた家が古く手狭になり、何処か閑静な所へ新築をと考えており
ました。

当時、夫婦そろって植物栽培が趣味で、もう少し広い庭のある家に住み
たいという夢がありましたが、その夢も、なかなか叶いませんでした。

猫の額ほどの狭い庭で、いろいろ工夫しながらの趣味の植物栽培を続け
何年も経ちました。

住んでいた所は東京に近い都会でしたが、自然が好きですからある時、
植物観賞を兼ねて夫婦でドライブに近在の山里に行きました。

道すがら、国道沿いに不動産屋の土地売買の看板が目に留まりました。

不思議なもので、潜在的に心の中で思っていることは偶然、現実化する
ものなんですね。


「建物と土地 各何坪 坪単価 幾ら幾ら」 


看板を設置した場所の価格を表示したもので、この交通至便な場所の物件
価格が想定外だったので特別に気になりました。

「今住んでいる空気の淀んだ水の不味い場所にくらべて、この価格!」

「この辺りなら何処へ行くにも便利で好いね。」

看板の文字は二人を捕えて離しませんでした。


価格は都会地の3分の1〜4分の1でした。同じ費用なら3倍〜4倍の
広い土地が買える。そう思う二人の意見は一致しました。



土地の購入と家の概略設計


善は急げで数日後、看板の不動産屋を訪ねて3ヶ所の物件を案内して貰い
ました。家を建てた現在の土地は、その時に決めたものです。

3ヶ所の土地はかなり離れた地域に点在していて、いろいろ迷いましたが、
ある条件に出来るだけ合わせました。

その条件は、近くに高圧送電線がないこと、牛舎・豚舎・鶏舎がないこと、
南側道路で陽当りが良いこと(住宅団地で隣り家で日陰になる可能性の有
無、できれば独立した土地)、崖崩れなど自然災害にまともに遭遇しそう
にないこと、地震発生の大きな活断層がないこと、などを照らし合わせて
選びました。





さて、土地は入手しましたが、庭をどの位の広さにして家の大きさをどの
位に、どんな外観の家にするかなど、やることは沢山あります。

家造りの雑誌、家造りに関した単行本、昔の棟梁の書いた秘訣の本、モデ
ルハウス見学、間取りを中年の乏しい知能でいろいろと勉強しました。

間取りその他の作成には約半年かかりました。(高い買い物ですから簡単
にやり直せないし不満は一生着いて回るから、とことん検討しました。)

自分込みの満足する家を建てる為には、設計事務所を窓口にした方が、肝
心の設計と直接で良いと以前から考えていました。また、施工上の監理も
第三者の立場でやってくれるから安心です。(厳密にはどの程度第三者的
なのか判りませんんが、、、。)

とにかく「設計事務所に相談して発注する。」と決めていました。



設計事務所に見積依頼


ある家造りの雑誌に掲載されていた写真の家が気に入り、当方のおおよそ
の予算、間取り、外観を伝えて、その家を造った建築設計事務所に見積り
をお願いしました。

購入した土地を見て貰い、設計事務所が手がけた家も見学しました。
(見学の時に施工不具合がありましたが、あまり気になりませんでした。)

1ヶ月ぐらいで設計事務所からの見積りを見ましたが、金額が大幅に予算
を越えていました。予算の約1.5倍にもなっていたのです。

どこで何を勘違いしていたのか、ハッタリで金額を提示し徐々に削って行く
常套手段なのか、目安の予定金額を無視されて、即座にお断りしました。


予算は住宅ローンの返済額から算出しています。この金額なら月々これだけ
支払って行けば可能という金額です。借りて返す金額には限りがあります。

建築設計事務所という専門家がその辺の事情をわきまえていると考えた方が
甘かったのでしょうか。

建築家は、ある固定した自分好みの建築があり、それ以外の場合は設計を
やりいいように手直して請け負う方針のようでした。

予算に見合う家を設計すれば良いと思いますが、この建築家は主張が強く
予定外の思い通りにならない設計変更を嫌っているようでした。

自社の設計の中身に儲けの出る範囲が決まっているようで、当初に伝えた
予算の家など作れないという事らしいのです。

それなら、最初から「その予算では出来ない」と言ってくれれば、別の設計
事務所を探す手立ては有った筈です。

施主と相談しながら家を造り上げる手助けを主に考えた、良心的な設計事務
所でないことが、その後のやり取りで露呈したのです。

設計を断った時、今迄までの経費設計料として100万円を請求されました。
頼みもしない本格的な設計図・模型などを作っての見積りだったのです。

設計契約もしていない段階なので支払う必要はないと思いましたが、価格が
合わなければ見積変更、設計変更で対処してくれるだろうと安易に考えてい
た当方の勉強不足も有ったし、争いたくない心境だったので、支払いました
が高い授業料でした。

設計事務所も、まさか断られるとは思ってなかったようです。

当方は、家の建つ見込みのないうちに発生した100万円の損害は、大きな
出費でした。「どうしよう!」途方にくれましたが、それでも生来の脳天気、
「なんとかなるさ」と深刻にはなりませんでした。

家を建てる望みに集中していたからからかも知れません。

ラッキーな遭遇


 当時、自分は印刷関連の自営業でした。得意先から仕事をもらい印刷原稿
(版下)を毎日のように納品していましたが頭の中は、新築しなければなら
ない家のことで一杯でした。

税金の関係か法律か判りませんが、土地を購入したら2年以内に家を建て
なければならない。という事も意識していました。


ある日、自動車で信号待ちしていた時のことです。交差点の右手、道路の向
かい側の2軒目に、まだ、そんなに古くない好い感じの家を見つけました。

表現すると、簡素で重厚で無駄の無い落ち着いた切り妻の家が信号待ち
の僅かな時間に目に付いたのです。

「これだ!」

イメージが現実化した瞬間とでも言いましょうか、感覚的なものですが自分が
望んでいる家が目の前に有ったのです。

直進してUターン、左折して速度を落とし、家の様子を見ましたが、近くで
見ても好い感じの家でした。





後日、表札から電話を調べて

「家を新築しようと思っているのですが、お宅の感じがいいので同じような
 家を造りたいのですが、頼んだ工務店を教えてもらえないでしょうか。」

厚かましくも電話をしてしまいました。


すると、ツイているときはツイているものです、二つ返事で設計事務所に頼ん
だと言い、さらに、家の内部までも見せてくれるというのです。

見ず知らずの人間を家に入れ、なんと、間取りや施工状態を詳しく説明して、
家は5〜6年前に知り合いの設計事務所に頼んで造ってもらったと親切に教え
てくれたのです。


捨てる神なんとか、と言いますが、こういう事は有るんですね。

期待の設計事務所と交渉開始








その設計事務所は、自宅と購入した土地とのほぼ中間点にありました。距離
にして約60キロぐらいの地点でした。

さあ、忙しい事になりました。結果的に6回ぐらい往復しました。あとは電話
とファックスでのやりとりでした。


前の設計事務所との経緯を話しました。

今度の設計事務所は前と違いました。施主を考慮したポリシーが有りました。


※どんな家に住んでいるのか、今住んでいる家を見て設計の参考にする。

 家を見て好みとか生活様式などを設計に取り入れるため。


※予算通りに建築できる。

 大工さんの技量におおよそのA・B・Cランクが有って、住宅のグレード
 に合わせて起用する。


※設計料は常時7%でやっている。

 一般的には12%〜14%位らしいのですが、良心的だと感じました。

 2.000万円の家と仮定すると

     7%ならば設計料は140万円
    12%ならば設計料は240万円   差額は100万円になります。

 ちなみに、設計料は家の大きさで割合(%)が違ってきます。


 



この設計事務所なら希望の家を造れそうな気がしました。最初は、大手ビル関係
の大口の顧客が多いようで、あまり民間の小住宅を手掛けていないようなので少
し心配だったのですが、何よりも、偶然見つけたイメージぴったりの家を建築した
設計事務所だからと信頼して任せました。


事実、当方の依頼内容に対して、ほぼ満足のある返事を得ることができました。


一例をあげると、床柱に鉄刀木(タガヤサン)を指定したのですが、銘木店を
さんざん探して6寸の立派なものを見つけてきてくれました。

ベランダは、植木の水遣りに耐えられる造りにFRPを使い(船の材料)、鴨居
から天井高さ40センチを50センチに高く設計変更も快く応じ、屋根瓦も三州
瓦のサンプルを多種取り寄せてくれました。

天井高さの変更は強度などから大掛かりな設計変更になるため、初めに指定して
おいた方が良いようです。

基礎工事、梁や柱の部材など考えていたよりもシッカリしたものを使うなど、
大は小を兼ねる?建築はデザインよりも基礎の設計力が重要だとわかりました。


考えてみると、前の設計事務所で生じた100万円の損失は、建築依頼した設計
事務所の格安設計料で見事帳消しになっています。


いろいろありましたが、待望の我が家がやっと完成したのです。





 


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